2002年12月25日
イエメンにミサイルを買わせた米国の謀略
 イエメンに北朝鮮がミサイルを輸出していた事が、米軍による北朝鮮籍船舶の臨検で発覚した。北朝鮮が中東に武器を輸出している事など米国は15年以上前から知っていたはずなのに何故、あの時期に明らかにしたのだろうか?

 現在のイエメン政府はアラブ諸国の中でも指折りの親米で、特に同時多発テロ後は、米国はイエメンにアルカイダの拠点があるとして、米軍特殊部隊を派遣し、イエメン政府軍と共同で掃討作戦を行っている。これほどの親米政権が何故、米国が「悪の枢軸」と名指ししている北朝鮮からミサイルを買う必要があるのか?

 やはり「米国がイエメン政府に北朝鮮からミサイルを買わせた」と考えるのが自然ではないだろうか?米国はイラクを2〜3ヶ月で決着できると踏んでおり、次の目標は北朝鮮である。

 米国は「北朝鮮がミサイルを輸出していますよ。北朝鮮はこんなに悪い国ですよ。」という事を世界中にプロパガンダし、北朝鮮攻撃の国際世論を得ると同時に韓国の大統領選を対北朝鮮強硬派の李会昌氏に有利に進める事を企図したと考えれば、あの時期に臨検した事も納得できるし、船を直ぐ解放し、ミサイルをイエメンに簡単に引き渡したのも理解できる。

 韓国の大統領選は太陽政策を掲げる盧武鉉氏が当選し、在韓米軍装甲車による女子中学生2人の死亡事件は米政府にとって誤算だったと思う。

 北朝鮮は何故、米国の謀略にまんまとハマッタのだろうか?

 恐らく金総書記は「ミサイルを作って輸出していますよ。これをやめて欲しいならお金を出しなさい。」という外交カードにできると思ったのだろう。

 しかしここが、周りをイエスマンで固め、情勢の変化を進言する人が居ない独裁政権の悲しい所である。民主党のクリントン政権では武器輸出も外交カードになったのだが、共和党のブッシュ政権になり、特に9.11テロ以降はこれがもはや米国に対する外交カードにならない事が金総書記は判っていない様だ。判っていないから核施設を再稼動すると表明すれば、援助が引き出せると思っている。

 塩野七生氏のローマ人の物語に「自ら血を流してまで、祖国を守った経験のない国民は国家存亡の危機が迫っていてもそれを感知する能力も失っている」という一節があるが、日本の政治家、メディアの能天気さはどうだろう。或いは米国の謀略を判っていても言えないだけなのだろうか?