【年金制度改革についての私見】
政治家の国民年金未納が問題となっているので、自身の納付状況を調べてみたが、大学卒業後、現在に至るまでずっと勤務医をしているので未納期間は無いようだ。
現在の年金制度は極めて複雑で、社会保険庁も未納者には未納の通知を出すべきだが、そもそも、納めるべき人の約40%が未納という制度は既に制度として成立していない。
更に問題なのは年金給付額と生活保護給付額のアンバランスである。
即ち、真面目に働いて20歳から60歳まで40年間、年金保険料を完納した人が受け取る老齢基礎年金が66417円であるの対し、酒ばかり飲んで体を壊し、年金保険料を納めず生活保護になった一人暮らしの70歳の老人が受ける生活保護給付額が住宅扶助47700円等を含めると月額平均約142800円で倍以上というのはどう考えても納得できない。
年金保険料を納めず生活保護を受けた方が倍以上もらえるなら若者が保険料を納めないのは当然で、20歳代の国民年金未納率は50%を超えている。むしろ制度的には年金を貰わない方が生活保護は受け易い。
日本人は消費税アレルギーが強い割りに、給与から天引きされる保険料には無頓着なので、政府は、保険料の引き上げで社会保障制度の財源を賄おうとするが、国民年金保険料は年収2000万円の人でも、年収300万円の人でも同じ13300円である。生活レベルに応じて負担する消費税の方が公平ではないだろうか?
消費税を基礎年金の財源とするならば、弱者とは言い難い裕福な高齢者も、プータローをしている若者も、サラリーマンの妻も生活レベルに応じてその財源の一端を負担し、世代間の負担の不公平、年金保険料未納者の増大、第三号被保険者の問題などを一気に解決できる。そして前年度の消費税の税収を翌年度の基礎年金の給付に充てている限り、財源不足で制度が破綻する心配も、官僚が採算の取れない事業を始める心配もない。
今回の政府案も年金制度の抜本改革には程遠く、急速な少子高齢化が進む我国に於いて年金制度を堅持するには次の3つの改革を提唱したい。
@ 財源を現行の保険方式から目的税化した消費税に変更する。
A 生活保護給付額とのバランスを考えれば支給額を1人当たり月額10万円程度とし最低限の老後の生活は全額国庫負担の基礎年金で国が保証する。
B 行政が関わる年金は基礎年金に一元化し厚生年金や共済年金などの付加年金は民営化し行政は関与しない。
社会保障の進んだ欧州諸国の消費税が、スウェーデンの25%をはじめ、スイスの7.6%を除けば全て15%以上であるのは「贅沢する者が沢山納税する消費税が極めて公平な税制である事の証左」といえる。韓国でも10%、米国でも州によって異なるが、ニューヨーク市では8.25%の小売売上税が課されており、先進国と称される国の中で消費税が5%以下の国は日本だけである。
弱者に厳しいと言われる消費税の逆進性については、生鮮食料品や木綿の下着などの生活必需品物は5%に据え置き(個人的には0%でもよいと思う)、生活必需品物以外には15〜20%という複数消費課税にすれば良く、平成16年4月より総額表示となったが、内税方式にすればそれ程の重税感はない
2002年10月1日現在の日本の高齢化率18.5%は、既に欧州諸国を抜き世界1であり、65歳以上の人口は、2363万人となっている。仮に、1人当たり基礎年金として月額10万円を支給したとしても年間約28兆円で、この財源を全額消費税に求めても約14%で、欧州諸国と同レベルになったに過ぎない。
2004年5月26日