【さいたま市の子育て支援策は少子化対策に寄与しているのか?
その評価法を問う」(2005年12月定例会 一般質問より)】
 周知の様に子育て支援策は相川市政の最重要政策の一つで、平成17年度も約200億円を注ぎ込んでいる。そこで費用対効果の評価の指標として、相川さいたま市政過去4年間に於ける晩婚化、DINKS、一人っ子家庭、特殊合計出生率の推移について質問した。

保健福祉局長の答弁は以下の通りであまり効果は無い様だ。。
◆20歳〜34歳の平成2年、7年、12年の未婚率は男性67.0、68.5、68.8%、女性49.5、52.8、54.0%と晩婚化は進展。
◆20歳〜49歳の夫婦のみの世帯数割合は平成15年:23.1、平成16年:22.8、平成17年:22.9%でほぼ横ばい。
◆20歳〜49歳の一人っ子世帯数割合は平成15年:29.1、平成16年:29.5、平成17年:29.6%で微増。
◆特殊合計出生率は平成13年:1.25、平成14年:1.23、平成15年:1.19%と低下、平成16年は1.22で前年よりやや上昇。

 社会実情データ図録によれば先進諸国に於いては家族・子供向けの公的支出(児童手当・託児施設等)と出生率の間に正の相関は見られず、むしろ私的教育費の高さと出生率の間に負の相関が見られる。学校教育費の私的負担が世界1高い韓国では出生率が2000年の1.47から2004年には1.16と日本より急激に低下している。
 また、女性の就業率と出生率の関係は1980年代までは女性の就業率が上がれば出生率が下がる負の相関関係にあったが、2000年代には女性の就業率が上がれば出生率も上がるという正の相関関係に変化している。特に北欧諸国に於いてこの傾向が見られるが、日本では一貫して女性の就業率の上昇に伴って出生率は低下している。これは日本では婚外出生が出生総数の1.9%(2003年)に過ぎないのに対し欧州諸国では非婚カップルによる婚外出生が急増しているという宗教観の違いによる所が大きい。《婚外出生率:フランス 6%(1960年)⇒44%(2003年)、スウェーデン 10%(1960年)⇒56%(2003年)》。  

 そもそも児童手当・託児施設といった子育て支援策が全く無い開発途上国では人口は増加している。子孫を残せるかどうかがが不確実な開発途上国では出生率が高く、平和と繁栄が続き子孫を残す事に不安が少ない先進国では少子化が進むのは人間の動物としての本能に根ざすものであり、児童手当や託児施設の拡充といった母親の就労支援策の如き政策では効果が無いと思われる。かつてのローマ帝国に於いても平和と繁栄が続いたパクス・ロマーナと呼ばれた時代には少子化が問題となり、皇帝アウグストゥスは未婚の女性に「独身税」を課したり、能力に差が無いなら子供が多い男性を優先的に公職に採用して結婚と出産を奨励した。この制度は300年近く続き少子化の抑止力として相当な成果をあげた様だ。

 2005年の出生率は2004年の1.29を更に下回って1.26になる様だが、少子化の抜本対策は子育て世帯を優遇する税制と公立学校の復活だろう。平等を強調すればするほど不平等な社会が出来るものだが、公立学校の「差」を無くそうとして学区制を導入した結果、公立学校の学力が低下し子弟を塾や私学に通わせる経済力が親にあるか否かという「差」がむしろ大きくなっている。東京の日比谷高校や、埼玉の浦高の進学率が高かった頃は貧しくても一生懸命勉強すれば誰でも有名大学に進学できたし、出生率も高かった。

 何処を切っても金太郎飴の日本のマスメディアは「子育て世帯を優遇する年金制度でフランスは94年の出生率1.65を2002年には1.88へ、スウェーデンは2001年の1.57を翌年1.66へ回復させたのに比べ日本は少子化対策が不十分」と言う。しかしながら、フランスとスウェーデンの消費税はそれぞれ19.6%と25%、日本の国民負担率35.5%に対しフランスとスウェーデンはそれぞれ66.0%と74.3%であり両国の国民は日本国民の約2倍の税負担、保険料負担をしている。また前述の非婚カップルによる婚外出生の違いも報じなければ公平・公正な情報公開とは言えない。

 東京での調査だが25歳〜34歳の未婚女性の39.2%が同年代の未婚男性に年収600万円以上を期待しているのに対し年収600万円以上の同年代の未婚男性は3.5%しかいないそうだ。
 日本の男達は学校で「自分の才能や個性を活かせる仕事をしよう。」と教わったもののそれで飯が喰える人達がほんの一握りに過ぎない現実に対応できず、年収600万円以上はおろかフリーターやニートとなり、ジェンダーフリーなる教育で更に男らしさを失って行く事を2005年の6月議会で述べた。一方、女性達は「自分に一番合った人と結婚すれば良い」と教わるものの、周りには年収600万円以上はおろかフリーターやニートの男達ばかりで、晩婚化は更に進む。

 自分の理想の相手と結婚できる人はわずかに過ぎず、結婚や育児は楽しい事ばかりでは無い事、自分の才能や個性で飯が喰える人達はほんの一握りに過ぎず、歯車的な仕事であっても施しを当てにすることなく「自分の食い扶持は自分で稼ぐ」のが男らしさである事を公教育で教える事も少子化対策として重要と考えるが、いかがだろうか?

追記: 2005年も皆様方には大変お世話になりました。2006年も引き続き宜しくお願い致します。



2005年12月23日