2020年3月20日
医師から見た新型コロナ感染症:その2

【感染経路と予防法〜2020年3月の執筆時点】
 保菌者と濃厚に接触することによる飛沫感染、ウイルスに汚染された環境にふれることによる接触感染が考えられています。一般的な風邪や季節性インフルエンザ対策と同様に咳エチケットのマスク着用、手洗い、うがい、アルコール消毒などが有効です。ワクチンは未だありません。

【基本再生産数=感染者1人からうつる人数】
 新型コロナウイルスの基本再生産数は4〜7人です。  
 基本再生産数は致死率が低く、潜伏期間が長く、接触感染⇒飛沫感染⇒空気感染の順で増加します。致死率の高いウイルスは保菌者が移動できない為、エボラウイルスは約1.5人、MERSも約1人です。インフルエンザは致死率0.1%以下ですが、潜伏期間が1〜3日と短いため約2人です。致死率0.01%で空気感染する麻疹(はしか)は12〜18人です。

【確定診断〜2020年3月の執筆時点】
 咽頭ぬぐい液や痰を検査材料として、遺伝子増幅法(PCR検査)で検査します。 3月6日から保険適用となりましたが、帰国者・接触者外来を設置している医療機関でしか検査出来ません。埼玉県内では24医療機関で検査可能ですが、厚労省が非公表としており、保健所或いは埼玉県・さいたま市の新型コロナウイルス相談窓口に問い合わせる必要があります。
 3月16日から研究・検査機関向けに血液をサンプルとする簡易抗体検査キットも販売されましたが、ここまで国内に広く蔓延している状況では結核と同様に、入院治療は指定医療機関に限定しても、診断のための検査はどの医療機関でも可能にすべきです。

【治療法〜2020年3月の執筆時点】
 特効薬は未だありません。作用機序を考えるとRNAポリメラーゼ阻害剤であるインフルエンザ治療薬のアビガンが効く可能性があります。この薬は催奇形性等の副作用を理由に厚労省が備蓄管理しており、現在は国が承認した臨床治験以外では使用出来ませんが、催奇形性は多くの高齢者には無関係です。
 臨床治験の結果が出るまでに多数の患者さんが重症化し、死亡例も出ている現状を鑑みると、「薬とは毒を以て毒を制するもので、良く効く薬に副作用はつきもの」という事を、ご理解頂ける患者さんには使用して良いと思います。